かつて、正月やお盆に奉公人や嫁が実家に里帰りをするという風習がありました。
そのことを知っている人はどれくらいいるでしょう。
その風習のことを藪入りと言うのです。ほとんどの人は藪入りの言葉の意味も知らないと思います。
実は、かつては藪入りになると、子供が帰ってくるということで、田舎の家ではおいしいご馳走をたくさん作って待っていたという話なのです。
この記事では、そんな藪入りの由来と歴史、お盆や正月に帰省をするという風習の起源を紹介しています。
昔の生活を思い返せる言葉、藪入り
仕事=生活が当たり前、休みという概念はなかった
昔は 奉公人に休みはありませんでした。それが当たり前だったのです。そして、嫁いだ嫁もいったん嫁いだら、実家へは帰らせてもらえなかったのです。
そういう時代でしたが、年に2日だけ、住み込みで働く奉公人や、結婚して嫁いだお嫁さんが、実家に戻れる日がありました。
それは、小正月の翌日と、お盆の行事が終わった翌日で旧暦の1月16日と7月16日に当たる日です。
それが、いわゆる藪入りです。
ずっと働きづくめの奉公人やお嫁さんは、年に2回のこの休日は本当に待ち遠しくて嬉しかったと想像できます。
盆と正月が一緒に来た、といった、うれしいことが合ったときの表現もここから来ていると言われています。
ちなみに、実家が遠くて帰れない人も、お芝居見物などで、休暇を楽しんだと言うことです。
藪入りの名前の由来と起源
正月明け、盆明けが藪入り
この藪入りの由来については、定説がないようです。実家へ帰るという意味の「宿入り」という言葉から来ているという説や、藪の深い田舎に帰るからという説などがあるそうです。
年に2回の藪入りなのですが、それぞれの期間が、1日だけだったのか、数日にわたっていたのかは奉公先や嫁ぎ先によって異なっていたようです。
一般的には奉公人は年に2回、それぞれ1日だけだったようです。しかし、結婚した女性の場合は年に2回、小正月とお盆に藪入りを含めて数日間の期間があったみたいです。
藪入りの言葉の使われ方
俳句の世界では、季語として用いられています。1月が「藪入り」、7月を「後の藪入り」といって、「藪入り」が新年の季語、「後の藪入り」は初秋の季語です。
また、関西では1月16日、7月16日の藪入りを「6」がつくので「六入り」と呼びました。さらに九州では藪入りのことを「親見参=オヤゲンゾ」と呼んだそうです。
帰省の行事はその名残
現代も続く藪入り?
現代も実は藪入りの行事は受け継がれています。それは、盆と正月に故郷へ帰る、あの「帰省」です。
毎年、盆と正月には、都会から田舎への帰省ラッシュが起こりますね。嫁いだ先から娘が孫を連れて帰ってきたり、都会で働く息子が家族を連れて帰ってくるわけです。
今も昔もその風習は変わらずに受け継がれていると言えばいいのでしょうか。
昔から、盆と正月は、親兄弟と親戚達が集まって、賑やか過ごしていたんですね。
というわけで、昔の「藪入り」が今では「帰省」になり、「正月休み」「お盆休み」に受け継がれているというわけです。