ふだんつかっている紙も、植物から作られたものですね。
いわゆる洋紙は、主に針葉樹や広葉樹の幹をパルプという状態にして作っています。
ところが、和紙は、木の皮が原料なんです。
三大原料と言われるのが楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)です。
この記事では、それぞれの原料のこと、和紙づくりに欠かせない脇役のトロロアオイのことを紹介しています。
伝統の和紙のすごさ
自然の材料を生かす技
いずれも繊維が長くて強く、光沢があります。和紙の特徴である薄くて強い性質を作り出せるわけです。
これらの原料は、日本の国の山野、原野に野生していたものです。それを取ってきて、畑のあぜ道や山の傾斜地等に栽培をして収穫をしてきたそうです。
しかし、和紙の消費量が少なくなり、赤字生産になってしまい、多くは生産から撤退することになります。
しかし、最近は和紙のよさが見直され、伝統的な製法で作られた和紙を作り続けている産地が増えてきているそうです。
楮とは?
楮はクワ科の落葉低木
楮はヒメコウゾとカジノキの交配種で、成木は3メートル程まで成長します。比較的栽培は容易で、毎年収穫できるそうです。
繊維は太くて長く強靱で、障子紙、表具洋紙、美術紙、奉書紙、番傘、提灯など、さまざまな用途に使用されています。
みつまたとは?
みつまたはジンチョウゲ科の落葉する低木植物
みつまたは日本古来の製紙原料だったそうです。最初に紙原料としてみつまたを使用し始めたのは、今から400~500年も前だったといわれています。
みつまたが一般的に重要な製紙原料となったのは、明治の初年に大蔵省の印刷局が初めて使用した頃からだそうです。
みつまたは枝分れの状態がほとんど三つになっているので、みつまたといわれます。成木は2メートル余りになり、苗を植えてから3年枚に収穫できるそうです。
岡山県の生産量が最も多く、高知県、徳島県、島根県、愛媛県などで生産されているのですが、生産量は年々減少しているそうです。
みつまたの繊維は楮に比べると、光沢があって、薄いオレンジ色をしているそうです。そこで、書画、写経料紙に好んで使われ、金箔や銀箔を出荷するときの箔合紙に用いられます。
雁皮とは?
雁皮はジンチョウゲ科の落葉低木
雁皮の成木は2メートル余りにもなるそうです。繊維は細くて短く、光沢がある優れた原料なのですが、成育が遅くて栽培が難しいのです。
そこで、山野に自生している雁皮を生剥ぎにして捕獲するしかないそうです。自生地域も限られることから、生産量は少なく、高級な書画用紙として使われています。
その他の用途としては、金箔などを製造するときの箔打紙として用いられると言うことです。
トロロアオイの根の役割は?
接着剤ではないねりの目的
和紙の製造過程ではトロロアオイの根が「ねり」として使われます、。この「ねり」は原料の繊維を水中に1本1本むらなく分散させておくために用いられるそうです。
じつは、いくらうまく処理した原料でも、水の中で均一に繊維を分散させることは簡単ではありません。
また、楮、みつまた、雁皮などは繊維が長いので、なおさら一様に分布させにくということです。
さらに、植物繊維の比重が、水の約1.5倍ぐらいなのですぐに沈んでしまうんですね。そこで紙を漉くときには「ねり」の力を借りるわけです。
繊維を接着するために使われていると勘違いされますが、「ねり」の役目は水中で繊維を分散させるのであって、接着力は全くないそうです。