アスベストは、熱に強く、化学的にも安定しています。
そのため、建築資材、工業製品などの多くの場面で使用され的たのです。
ところが、アスベストの繊維はあまりに細かくなってしまい、飛散しやすかったのですね。
そして、目に見えない繊維がかなり遠くまで飛散しまったのが、健康被害を拡大させたわけです。
この記事では、アスベストの歴史や多く利用されてきた経緯、そして、中皮腫などの癌になってしまうわけや治療の難しさなどを紹介しています。
アスベスト=石綿とは
繊維状の天然の鉱物のこと
日本では石綿といわれていました。軽く綿のような状の性質を持ち、さまざまな形に加工が容易だったのです。
アスベストの人類による使用の歴史は長く、古くは古代エジプト時代にまで遡るそうです。
紀元前2500年頃の記録では、ファラオのミイラを包むためにアスベストが使用された事が分かっています。
また、紀元前4〜5世紀のギリシャにおいて、アスベストをランプの芯に利用していたこともわかっています。
中国ではアスベストが「火で洗える布」として「火浣布」と呼ばれてきました。これは、火にくべても燃えない布として珍重されたわけです。
日本では、江戸時代中期の博物学者で発明家としても知られる平賀源内が秩父の中津川でクリソタイル=白石綿と思われるアスベストの鉱石を1764年に偶然発見しました。そして、これを小さな布に織って幕府に献上したという記録があるそうです。
海外ではカナダや南アフリカで大量に採掘されてきました。日本では、北海道の富良野で白石綿が大規模に生産されていた歴史があります。
また、熱に強く、化学的にも安定しているので、建築資材、工業製品などの多くの場面で使用されたのです。
ところが、アスベストの繊維はあまりに細かくなってしまい、飛散しやすかったのです。そして、目に見えない繊維がかなり遠くまで飛散しまったのが、健康被害を拡大させたわけです。
この、アスベストが起こす健康障害には、石綿肺、肺がん、中皮腫といったものがあるといわれています。
そして、このうちの、中皮腫がどのくらいのアスベストを吸うことによって発症するかは明らかにはなっていないそうです。
アスベストでがんができるわけ
中皮細胞は肺組織の一部
肺や心臓などの胸部の臓器はすべて膜におおわれています。胃腸や肝臓などの腹部の臓器も一緒に、胸膜、心膜、腹膜と呼ばれる膜に包まれています。
体の内面も、これらの膜でおおわれていて、この薄い膜に、中皮細胞という細胞が並んでいるそうです。
中皮腫とは、中皮細胞から発生するがんのことをいいます。その発生する場所によって、胸膜中皮腫、心膜中皮腫、腹膜中皮腫といわれています。
かつては、中皮腫には悪性と良性があるといわれていたのですが、現在は、中皮腫には悪性しか存在しないと言われています。
いままで良性腫瘍の胸膜中皮腫と呼ばれたがんは孤在性線維性腫瘍と名前が変わりました。そして、中皮腫には含まれていません。
中皮腫は、限局性という、1ヵ所で大きくなっていくタイプと、びまん性という膜全体に広がっていくタイプがあり、多くがびまん性だそうです。
中皮腫の診断では、胸膜プラークと呼ばれている、胸膜が部分的に硬くなるものがみつかります。胸部X線写真でこれが認められるとアスベストを吸った証拠になるわけです。
中皮腫の症状とは
早期発見が難しい中皮腫
胸膜中皮腫では、胸が痛くなり、咳がひどくなり、大量の胸水によって呼吸困難や胸部圧迫感が起こります。
そして、原因不明の発熱が続き、体重が減少することもあります。さらに、胸膜中皮腫では腹水によっておなかが張ってくるそうです。
ただ、そういった症状は中皮腫以外にも見られることが多く、中皮腫に特徴的な症状ではないがゆえに、早期発見が難しい病気になっているわけです。
中皮腫のほとんどはアスベストを吸ったことにより発生するといわれています。これは、アスベストを扱う労働者にとどまらず、家族や工場周辺の住民も発生しています。
アスベストにさらされる機会が多いほど、またその期間が長いほど発症の危険性が高くなるといわれています。
アスベストを吸ってから中皮腫が発生するまでの期間はとても長いのが特徴です。25年から50年程度で平均しても40年ほど経ってから発生するといわれています。
中皮腫の治療
今後の課題
悪性の胸膜中皮腫は、今まで生存期間を延ばす事が明らかな治療方法がありませんでした。そのため、多くの人が苦しんできたのです。
2003年5~6月に発表され、7月に論文が出たのが、抗ガン剤のペメトレキセドです。
アメリカでの商品名はアリムタで、2004年2月5日米国食品医薬品局によって悪性胸膜中皮腫への治療薬として承認されたのです。
悪性胸膜中皮腫の患者さんに、抗ガン剤のシスプラチンの単独投与をした222名の平均生存期間が9.3ヶ月だったそうです。
それに対して、シスプラチンとアリムタの両方を投与した226名では、平均生存期間が12.1ヶ月にのびたのです。
この薬の開発当初、副作用による死亡者がありました。しかし、現在では、葉酸とビタミンB12の併用によって、強い副作用は解消されています。
現在の副作用は、白血球減少や嘔吐等が10~28%程度の人に認められているレベルだそうです。
ただ、この治療による2年以上の生存者の比率が悪性胸膜中皮腫全体の2割以下に留まるので、これでは、治す薬とはいえないレベルだそうです。
しかし、今後は標準的治療になりうる可能性も広まってきたと言えるわけで、多くの患者にとって、支えとなり得る可能性をもつ薬だといえそうです。