同じような場所に豪雨の雨雲が居座ってしまう、「線状降水帯」。
豪雨災害のメカニズムがどんどん明らかにされてきています。
100年に1回といえば、一生に一回あるかどうか、というくらいのレベルですね。
この記事では、線状降水帯と梅雨前線の関係、地球温暖化との関連性などを紹介しています。
線状降水帯と日本の梅雨との関係
梅雨は高気圧と前線が特殊な状態
梅雨と呼ばれる時期は、北海道の北側に居座っているオホーツク海高気圧と日本の南の海上にある太平洋高気圧が日本付近でぶつかっています。
この2つの高気圧から吹き出す湿った空気が、ぶつかり合って拮抗状態になっているのが梅雨というわけです。
ここで、オホーツク海の冷たい空気のかたまりと太平洋の暖かい空気のかたまりは性質が異なるので、混じり合わずに境目ができます。
この境目は線のように延びて、前線ができ、これが梅雨前線と呼ばれているものなのです。
この前線は高気圧の勢力によって、上がったり下がったりの状態で、あまり動かないので、1ヶ月以上も雨やくもりの天気になりやすいことになるわけです。
梅雨明け時期に豪雨が多いわけ
梅雨の終わり頃が最も不安定
梅雨が終わりに近づいてくると、梅雨前線に沿うように中国大陸の南の方から、湿った暖かい空気のかたまりが日本の方へ流れ込むようになります。
この空気のかたまりが天気図では長くのびている舌のようにみえるために、湿舌=しつぜつと呼ばれています。
この湿舌が西から延びてきて、東シナ海の上を通る間に、大量の水蒸気を取り込んできます。
夏が近づいて太平洋高気圧が勢力を増してくると、太平洋高気圧の西のへりでふき出す風が暖かくて湿った風をもたらします。
湿舌に大量の水蒸気を含んだ南よりの風がぶつかると、一気に持ち上げられて、強い上昇気流が発生します。
そして、そこに積乱雲が次々とできてしまい、その結果、強い雨が長時間にわたって降り続くことになります。
これが梅雨の終わりの頃によく大雨をもたらす状態です。この梅雨の終わり頃の大雨は西日本で起こりやすいといわれています。
特に、九州や中国、四国地方に多く、1982年の長崎豪雨、2012年の九州北部豪雨、2014年の広島土砂災害といったものがその結果起こっています。
豪雨をもたらす要因
湿舌に発生する積乱雲
2つの空気のぶつかり合いがいつどこで起こるかは予測が難しく、いったんそれができると、長い時間大雨をもたらすことになります。これが、線状降水帯です。
大量の暖かく湿った空気の継続的な流入と、その空気を上空に持ち上げる要因が存在していることが重ならないと起こらないことになります。
そのために、線状降水帯は台風のような正確さでは予測ができないのが現状だと言われています。
この線状降水帯で、猛烈な雨は、短時間に狭い川を氾濫させ、谷の両側を削り、山崩れを起こし、家々を破壊していくことになるのです。
このように、線状降水帯ができる条件は大まかにはつかめるとしても、実際に起こって初めて、その存在が確認できる程度で、精度は上がらないのが実態だそうです。
地球温暖化との関連
実際に起こっている豪雨は2倍以上
こういった、豪雨が増えている背景には地球温暖化があるといわれています。温暖化によって、異常気象の頻度が増していて、それが、日本では特に大雨が増えているようです。
気象庁が発表したものに、今後、温暖化が進むと、日本がどうなるかを予測した地球温暖化予測情報があるそうです。
それによると、21世紀末の気温は20世紀末と比較してなんと、4.5℃上昇してしまうということになっています。
大雨に関しての予想では、1時間降水量が50mm以上の滝のような雨の発生回数が全国平均で2倍以上に増えるという予想になっています。
逆に、雨の降らない日数が全国的に増え、雨の回数も減って、その結果、降る時は一度に大量の雨が降ると言うことだそうです。
世界の温暖化は着実に進んでいます。特に2000年あたりから加速しているともいわれています。
したがって、豪雨の増加は、いつか起こることではなく、すでに起こりつつあることだと考える必要があるわけです。