アコースティックギターの世界トップブランド、マーチンの創業者はどこの国の人か、アメリカだと思っている人がほとんどでしょう。
じつは、そはの人物、クリスチャン・フレデリック・マーティンはドイツ人だったのです。
父親のヨハン・ゲオルグ・マーティンは、ドイツのエルベ川そばの小さな村で、ヴァイオリンのケースや出荷箱などを製作していたのだとか。
これだけでも波乱万丈の生涯のように見えますね。
この記事では、マーチンギターの誕生の歴史、移民として新天地アメリカへ渡ったこと、そして、現在のマーチンギターのことを紹介しています。
マーチンギターの誕生と歴史
波乱に満ちたマーチンギター
クリスチャンは、15歳の頃、ウィーンに行き、ヨーロッパで有名だったギター製作家ヨハン・シュタウファーに弟子入りします。
シュタウファーの工房でギター製作の技術を身につけたクリスチャンは、ドイツで楽器を作り始めますが、ヴァイオリン製作者ギルドの紛争に巻き込まれます。
そのなかで、苦悩を感じ、疲労の果てに、故郷を離れて、新天地アメリカへ渡ることにしたのです。
新天地アメリカでのスタート
1833年、アメリカで楽器店を始め、様々な楽器や楽譜の販売コーナー、裏部屋のギター工房といった、狭い場所から始まったマーチン楽器でした。
マーティン・ギターのヘッド・ストックにデザインされたいる、「C.F. Martin EST.1833」の意味は、この狭い場所でのスタートで創業したときの気持ちを引き継郷という意味だそうです。
1898年にはマーティン・ギターの商標が変更され、 C.F. Martin Co., NewYork から C.F. Martin Co., Nazareth Pa. になりました。
そして、一本一本のギターにシリアルナンバーの焼印が押すようになったのも、この頃です。
1900年代には弦の製造も始めます。ハンドワインディングのマーティン弦はシルクの芯に銀メッキの銅線を巻いたものでした。
この弦は、マーティン一家の手によって、手作りの封筒に入れられ販売されたそうです。弦の質も最高級で、入れ物もおしゃれでした。
現在のアコースティックギターのデザインはマーチンギターの作り出した物だと言われています。そして、現在でも大資本に買収されずに、一族経営で伝統を維持しているわけです。
マーチンギターの魅力
物と音、両面でのすばらしさ
まず、マーチンギターの魅力といえば、長年にわたって培われた技術から生まれる音の深みだといわれています。
どのギターを選んでも、音に深みがあって、弾く人と聞く人、双方が納得する音がでるというわけです。
そこには、それを最大限引き出す最高の技術が必要です。マーチンは長年に渡って培ってきた徹底した技術があって、それが注ぎ込まれた一品なのです。
また、多くのラインナップを揃えていることによって、弾き手の要求に応えることができる、というのもマーチンギターの持つ魅力の一つといわれているわけです。
マーチンギターの種類
さまざまな人気ギターの魅力
D-28
マーチンギターの中でも最も有名なモデルだといえるでしょう。最初に発売されたのは1931年です。世界中のアコースティックギターの手本になっている存在です。
D(ドレッドノート)
マーチンギターの定番で、15 5/8インチ幅、ネックスケールサイズは25.4インチ、力強い音が出ます。シンガーソングライターが多く使っています。
OOO(トリプル・オー)
エリック・クラプトンのシグネイチャーモデルで有名です。ボディ幅15インチ、ネックスケールは24.9インチと全体に小さめで、非常に弾きやすいモデルです。
OO(ダブルオー)
14 5/16インチと小柄なボディ幅でクラシックギターサイズです。指弾きをするプレイヤーに人気が高いモデルです。
マーチンギターに込めた精神
マーチン社の企業コンセプト
長いマーチンの歴史の中で、商品の取引方法、ギターのラインナップは多少変わっていきました。
しかし、ギター製作に対してのマーチン社の姿勢は創業以来一度も変わったことはないそうです。
1904年版のカタログには、フランク・ヘンリー・マーティンが序文を掲載していますが、このような内容です。
「どのように作れば、マーチンの音色がつくれるのか、そこには秘密はまったくありません。
私達は、ただただ、注意深くと忍耐強くギター製作を行っているだけなのです。
材料選びは厳格に行い、各部をていねいに組み上げ、全体のプロポーションを整えて、そして様々なポイントを入念にチェックする。
そういったことに、膨大な時間をかけます。これが高品質達成のためには必要だと言うことは確かです。
そして、演奏者がマーチン・ギターを弾いたときに、充分な満足を感じたなら、誰もマーチン・ギターが高価だと後悔することはないでしょう。」