一般的に、イスラム教って聞いたらすぐに思い浮かぶのが、あの頭にスカーフを被った女性の姿でしょう。それ、正式な名前をヒジャブと言います。
宗教的なことを知らない者にとっては、どこまでも謎です。
しかし、イスラム教を信じている人からすれば、あまりにも当たり前すぎて、そのギャップ、計り知れないものかもしれないそうです。
この記事では、ムスリムがヒジャブを利用するわけと、種類、現在のイスラム社会での意味合いなどを紹介しています。
真の国際化は、さまざまな違いを受け入れて、許容することだと思います。
ヒジャブとは?
なぜヒジャブをつけるのか?
ヒジャブは、アラビア語でいうと、覆うものという意味になるそうです。また、ヒジャブには頭を覆うという意味だけじゃなく、イスラムにおける貞淑や道徳といった意味をも表していると言われます。
そうなると、生き方そのものにまで影響を与えるってこと、わかりますか。イスラムの女性をムスリムと呼びますが、ヒジャブはムスリムの生き方を指し示しているわけです。
なお、スカーフのように布で頭や髪の毛を隠すものはヒジャブと呼ばれますが、イスラムには、よく似た服装がいくつかあるんです。
アバヤ
これは、黒い布で目と手足の先以外、すべて覆い隠してしまいます。
ヒマール
頭髪と一緒に、背中の方も隠します。
ブルカ
目の部分を網状にして、全身くまなく隠してしまう、アフガニスタンの民族衣装です。
ニカーブ
目だけを残して、全身を覆い隠します。
チャドル
イランでよく見られる、顔以外はすべてを隠すものです。
では、なぜムスリムたちはヒジャブを身につけるのでしょうか?これは、イスラム教の聖典コーランやハディースと言われるイスラム教の開祖ムハンマドの言行録によるそうです。
そこには、女性の服装についての規定があり、女性は顔と手以外は露出させてはいけないとあるんですね。
コーランより引用
信者の女たちに言ってやるがいい。かの女らの視線を低くし,貞淑を守れ。外に表われるものの外は,かの女らの美(や飾り)を目立たせてはならない。それからヴェールをその胸の上に垂れなさい。
自分の夫または父の外は、かの女の美(や飾り)を表わしてはならない。
なお夫の父、自分の息子、夫の息子、また自分の兄弟、兄弟の息子、姉妹の息子または自分の女たち、自分の右手に持つ奴隷、また性欲を持たない供回りの男、または女の体に意識をもたない幼児(の外は)。
またかの女らの隠れた飾りを知らせるため、その足(で地)を打ってはならない。あなたがた信者よ、皆一緒に悔悟してアッラーに返れ。必ずあなたがたは成功するであろう
ヒジャブは女性差別?
過去から存在する性的暴力
イスラム教では人間を弱いものとして捉えています。そこでは、女性が肌を露出させていると、男性が理性を失うというふうに説いています。
要するに、性欲に弱い男性の前で、女性はしっかりと自分の身を守ろうという話になります。
男性に要求するのでなく、女性に要求するというのも、歴史を感じる部分ではあるな、と思うのは私だけでしょうか。
いつから着用するのか
ファッションとしても発達
ヒジャブの着用は、12歳くらいからが多いとされています。初潮に合わせるという考え方もありますが、決まったものではないようです。
また、ヒジャブは強制されるものでなく、あくまでもムスリムの自由意志だということだそうです。従って、ムスリムによってはヒジャブを被らない人もいるそうです。
ヒジャブの着用は社会の近代化に伴って廃れていくのではないか、と思われていたそうです。
しかし、1980年代から逆にヒジャブ着用が増加してきたのです。それは、1979年のイラン革命によってイスラム復興という政治的、社会的変動が原因と言われています。
この革命が、近代化による経済格差や西洋化政策、独裁国家への不満が背景にあったと言われています。
イランではイスラム共和国となり、1982年にヒジャブの着用が義務化されたのです。
エジプトでも、1980年代から急にヒジャブの着用が広がります。明らかにヒジャブ着用が政治的なシンボルの意味が現れたと言われています。
当初は、政治的反発という現象のヒジャブでしたが、1990年代後半以降、経済発展により、おしゃれにお金をかけるようになりました。
そして、今やヒジャブは多様化して、ファッション商品の様相を呈するようになってきます。
雑誌や映画、ネットショッピングでもヒジャブが登場して、ムスリムの購買意欲に拍車をかけているようです。