とんでもない借金を背負っても、自己破産という手続きをすれば、そこから解放される、という、おいしい話だけが一人歩きしています。
確かに、借金は少なくなりますが、借金が0円になるというのは間違いだと言えるそうです。(税金の支払い義務や保証人の負担は関係がないのです。)
借金問題でどうにもならなくなったときに自己破産
免責の手続きが重要、単なる美味しい話ではない
自己破産の方法は、裁判所に破産申立書を提出して、その後、免責許可をもらって、借金を免除してもらいます。
ようするに、裁判所がその人の収入や借金の状態を調べて、支払い不能状態だと判断したとき、返済が免除されるわけです。
自己破産の宣告だけでは、単に破産を宣告しただけです。きちんと借金をなくすためには裁判所の「免責」が必要なんですね。
自己破産になる原因、方法
破産宣告と免責許可がそろうこと
先ほども述べたように、自己破産は、裁判所が支払い不能状態だと判断した場合、返済が免除されるだけです。
ようするに、いくら借金があっても、収入がそれよりも多ければ、自分で返済できるので、免責の判断はしてもらえません。
借金の免除のためには、支払い不能状態だと破産宣告することと裁判所の免責許可がそろう必要があります。
1.破産宣告
破産宣告は、破産手続きを始める裁判のことをいうのですが、一般に裁判所の破産手続き開始の決定のことを指す場合が多いみたいです。
まず、自己破産の申立てをします。すると、裁判官は債務者である申立人から話を聞きます。
そこで、申立人の収入、財産、そして負債額などから、支払不能状態と認めた場合、破産手続開始決定をするわけです。ここで申立人は破産者になるのです。
2.免責許可
破産宣告だけでは借金は消えないのです。債務に対して法律上の支払い義務を免除する、という決定、いわゆる免責許可が必要になります。
この免責許可が下りれば借金はなくなります。裁判所が免責に当たらない、と判断した場合は免責が認められないのです。
許可が下りるまで、ふつう数ヶ月はかかります。税金など一部の債権や保証人の債務は免除されないのです。
また、正義に反する行為なども、免責許可がおりないケースにあたります。たとえば、ギャンブルや破産手続き後の借金をしたりした場合です。
自己破産のメリットとデメリット
自己破産のメリット
1.借金が免除されて返済義務がなくなる
破産宣告後、免責許可によって、債務の支払い義務は免除されることになります。ようするに、借金が0円になるわけです。
ただし、滞納していた税金などの支払いや保険料、罰金、養育費といった、免責対象外があること、すなわち、「非免責債権」に注意する必要があります。
2.誰でも手続きが可能
借金が大きく膨らみすぎて、どうしよう状態に陥っていたとしても、自己破産によって救われる可能性はだれにもあります。
3.貸金業者からの取り立てが止まる
破産が認められると、貸金業者からの取り立てが止まります。毎日のように催促の電話や取り立てに悩まされたことがなくなるわけです。
4.すべての財産がなくなるわけではない
裁判所が決めた額の財産は手元に残せます。99万円以下の現金や20万円以下の預貯金なども対象です。
また、洗濯機やテレビなど比較的安価な家電なども残すことができるので、基本的な市民生活は保障されているわけです。
5.家族には迷惑がかからない
家族が保証人になっていないことが条件ですが、たとえば、家族がローンを組むことも可能です。また、子どもの進学にも影響はありません。奨学金制度も使えます。
自己破産のデメリット
1.ブラックリストにのってしまう
破産後、新しい借入れやローンの申込み、クレジットカードの新規発行は5年~10年間できません。さらにその情報は、自己破産宣告後5年~7年は抹消されないのです。
2.財産が処分される
自己名義の財産は、生活必需品をのぞいて処分して債権者に配当しなければなりません。住宅、保険、貴金属、自動車などは差し押さえられるようです。
3.職業に制限が設けられる
免責までの間は職業制限があります。しかし免責後は復権といって職業制限がなくなります。就職できない期間が続く場合は、生活保護の受給も可能です。
4.その他
自分の住所や氏名が国の発行する「官報」という機関誌に掲載されます。また、保証人の保証債務についての問題と向き合わなければなりません。
自己破産後の生活について
自己破産後の生活について知っておくべきこと
1.自己破産の申し立てから免責を受けるまでの間
手続き申請中は、所有資産の処分や転居、旅行の制限されます。破産者の逃走や財産隠匿を防止するためです。
一時的な外出は問題ありません。しかし、長期にわたり居住場所を離れるときは、裁判所の許可が必要になるそうです。
この期間は仕事についても制約を受けます。しかし、免責後は復権するので永久の制限ではないということです。
官報などへの記載、ブラックリストへの登録もこの期間にされます。また、本人名義の財産を他の家族名義に変更はできません。
新たな借金もしてはいけません。裁判所から免責不許可と判断されてしまうと、借金が消えないことになってしまうのです。
2.免責後
住居については、持ち家は破産管財人が売却することになります。売却されるまでは住めますが、その後は、基本、家は持てないでしょう。
賃貸住宅の場合は、転居の必要はありません。家賃を滞納でもしていない限り、賃貸借契約を解除されることはまずありません。
自己破産のしくみは、破産宣告で所有する財産の処分と引き換えに免責する制度です。したがって、財産の処分は当然です。
自己破産以外の債務整理について
他にもある、借金減免の方法
じつは、自己破産以外にも借金を減額する方法がいくつかあります。どの方法が一番適当か、慎重に選ぶことが必要になってくるのです。
1.個人再生
これは自己破産と同じように裁判所が間に入って、借金を減額する制度です。ただ、自己破産のように全額免除はできないことになります。
個人再生が認められると、最大で8割の借金が減額されます。残った借金も、原則3年間の返済計画で返済するようにできます、。
個人再生のメリットは、住宅を残せることです。対象者は、現在の借金の20%を3年以内で完済できることが基準になっています。
2.任意整理
これは債権者との交渉で、借金減額、利息カット、返済期間の延長などを決めていくやりかたです。あくまで任意なので、成功するかどうかは交渉次第です。
ただ、リスクが低いので、返済は苦しいけれど、どうしようもできない状態ではない場合に検討することが考えられます。
3.特定調停
これは、裁判所を介して債権者と和解して、借金額を調整していく方法になります。費用も安く、個人交渉もできますが、うまくいかないケースもあります。
専門家の力を借りずに借金減額が見込めるので安く付きますが、上手くいかないと、時間と労力の無駄になります。
4.過払い金請求
過去にグレーゾーン金利で借り入れをしていた人は対象者です。もし、この対象の可能性があれば、真っ先に過払い金請求を行う必要があります。
2010年よりも前に、金融機関から借り入れをしていた人や利息18%以上で借り入れをしていた人が対象者になるようです。