和歌に用いられる枕詞というのは特定の言葉を導いています。
しかし、歌の意味とは直接の関係がないことになっているそうです。
ただ、平安時代より前につくられた万葉集などでは、枕詞そのものが意味を持つような使われ方があるので、気をつけなければなりません。
この記事では、そんな枕詞の「ちはやふる」のことを紹介しています。
百人一首でも有名なこの言葉、一体どんな由来があるのでしょうか。
千早振るという字の読み方は?
枕詞は特定の言葉を連想させて歌うもの
百人一首の「ちはやぶる」
「ちはやぶる」は枕詞(まくらことば)で、「神」や「宇治(うじ)」などにかかると言うことになっています。
「ちはやぶる」が使われている歌として有名なものを挙げましょう。
・ちはやぶる 神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは
・ちはやぶる 宇治の橋守なれをしぞ あはれとは思ふ年のへぬれば
このように、枕詞「ちはやぶる」を聞いたら、「ちはやぶる ⇒ 神~」あるいは「ちはやぶる ⇒ 宇治~」という流れが予想できたわけです。
近代の短歌の場合でも、枕詞の性質には変わりはないようです。有名な歌人である斎藤茂吉の歌で。この「ちはやぶる」が使われているものがあります。
・ちはやぶる 神ゐたまひてみ湯の涌く 湯殿の山を語ることなし
ちはやぶるの語源がわかってきた
ところで、どっちなの?ちはやふる、ちはやぶる
平安時代以降、ずっと「ちはやふる」の方だったようです。室町時代の「日甫辞書」という書には「チワヤフル」とあります。ということは、その頃は「ちはやふる」だったんですね。
江戸時代にもそれが続いていただろうと考えられるので、百人一首においても、「ちはやふる」と読まれていた時代が長かったということになるわけです。
ところが、近代の『万葉集』研究の中で、ちはやぶるの語源の研究が進み、「ちはやぶ・いちはやぶ」が語源と考えられたそうです。
ここから、「破る」の方をとり、濁って読む方を選んでいったというものです。最近の辞書も、「ちはやぶる」だけで済ませるようになったようです。
ということから、競技かるたの読みも、そういった時代背景の中で「ちはやぶる」になっていったと考えられるそうです。