自ら望んて難民になる人はいません。戦争で国を離れざるを得ないのが真実です。
しかし、その戦争を生み出す根本に貧困がある、と言われているのです。
逆に、一部に富が集中して世の中では問題が構造化してしまって、さらに難民は増加していくのです。
最低限の生活すら保障できないまま、どんどん悪化していくのはなぜでしょうか。
難民問題の背景にある貧困とは
難民キャンプの子ども85%が貧困下に暮らしている
ユニセフが調べたところでは、ヨルダンに暮らすシリア難民の家族は、子どもたちに教育を受けさせたり、彼らを保護すること困難になっているそうです。
シリア難民の子どもの85%が、貧困ラインを下回る生活を強いられ、5歳未満のシリアの子どもの94%が、教育、保健、水と衛生、子どもの保護、および子どもの安全のうち、2つ以上が剥奪されているというのです。
増加する児童労働や早婚の現状は次のようなものです。
・シリア人家族の10家族のうち4家族が、食糧不安の状態です。
・シリア人の就学前の子ども45%が、予防接種などの保健サービスが受けられない。
・シリア人の子どもの38%は学校に通っていない。
・シリア人の6歳から17歳の子どもたちは、児童労働および暴力問題に直面している。
・シリア人の5歳未満児の16%は出生証明書を持たない。
世界の貧困問題の解決なくして難民問題は解決しない
開発途上国の5歳未満の子どもたちの5人に1人が、極度の貧困家庭で暮らしているといわれています。
これは、彼らの将来を限定してしまうだけでなく、社会全体の衰退につながっているといわれています。
難民という状態に区分されていなくても、生活そのものが逃げることもできない貧困の中にあるわけで、世界の約7億6,700万人が1日1.90ドル未満で暮らし、その半数が18歳未満だといわれています。
貧困問題の世界の実情
貧困と言っても人によって想像する基準が違う
絶対的貧困
はじめに世界的に定められている貧困の基準を説明しておきましょう。それは世界銀行が定めた貧困の定義で、1日1.9ドル以下で生活している人を指しているそうです。
これを日本円に換算すれば、約200円です。家賃も食費も被服費も交通費もすべて含んで1日200円の生活を想像できませんね。
これを絶対的貧困と呼びます。世界では10人に1人が絶対的貧困層だといわれています。
相対的貧困
もうひとつの定義が相対的貧困です。これは周りと比較した場合の定義出そうです。
その国の国民一人当たりの平均所得が年間100万円だとした場合、50万円以下の所得の人を相対的貧困とするそうです。
世界銀行によると、絶対的貧困の人は、世界で約8億人いるということです。
貧困は努力が足りないとか能力がない、運が悪かったなどといった、個人の問題にしてしまってはいけないのです。
社会の構造の方に問題があり、決して個人の問題として切り捨ててしまってはいけない社会の問題と考えないと、格差の広がりは止められない訳です。
お金持ちに都合のいい社会のルール
富が増えれば貧困対策にもなるという考え方
世界の経済はほとんど自由市場というしくみで動いています。それは、個人や企業がもうけを最大限に追求して競争すれば世界全体の富が増えて、貧しい人まで恩恵が行き渡るという考え方なんですね。
しかし、実際はどうでしょう。富はさらに集中し、貧困格差はますます助長されています。
この社会のルールは一部のお金持ちにとって都合のよいルールになっていて、変える気はないようです。